ほんのメモ

本を私なりに解釈したメモ

工学的ストーリー創作入門:人物設定

人物設定には七つのカテゴリーがある。

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表向きの顔と性格
癖や習慣、動きや外見、周囲はそれをみて人物を認識する。

バックストーリー
ストーリーが始まる前に起きた全ての出来事。今の人物を形成する過去のことである。

人物のアーク
ストーリーの中で人物が体験する学びや成長(変化)。その人物にとって最も厄介な問題をいかに克服するのかを考える。

内面の悪魔との葛藤
心のネガティブな側面。認識や思考、選択、行動を左右する心のあり方について検討する。

世界観
人物の信念体系や倫理観、バックストーリーと内面の悪魔がその人物の世界観に反映される。

ゴールと動機
決断や行動を後押しするものの検討。その人物がどんな代償や逆風にも負けずに得ようとするもの。

決断、行動、態度
ほかの六つの全てを反映してなされる決断や行動を定義する。

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人物を三つの次元でとらえる

ストーリーにはコンフリクト(葛藤、対立)が必要である。ストーリーにコンフリクトがあることによりドラマ的な緊張感がうまれ、読者がストーリーに感情移入できる。よって、ストーリーに登場する人物にはコンフリクトが必要である。人物を三つの次元で捉えると人物のコンフリクトを表現できる。

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人物を三つの次元で捉えて、人物の七つのカテゴリーを考えると深みのある人物設定になる。

第一の次元はただ事実として存在する。第一の次元の描写だけでは、人物の真実はわからない。別の次元で第一の次元の意味や意図を示さなければ読者に人物の真実は伝わらない。

第二の次元は「第一の次元がそう見える理由」を明かす。ただし、第二の次元は、まだ「その人物が読者にそう思ってもらいたい理由」でしかない。見せかけ(第一の次元)から人物の言い訳(第二の次元)を経て第三の次元で人物の実像が見えてくる。

第三の次元は、人物がピンチに陥ったとき、人物が必要に迫られたときに現れる人物の顔である。第三の次元では人物のモラルや心が表れる。それは第一と第二の次元で見えた顔と一致するとは限らない。

人物を変化させる

人物は、読者に好かれなくてもよい。だが、読者に応援してもらうことは必要である。読者には人物の心情の変化についてきてもらわなければならない。ストーリーではその人物に「変化の道」を歩ませる。人物は危機や必要性に迫られて行動し、達成し、学び、変化する。書き手の仕事は人物の成功や失敗そのものを書くことではなく、その人物を通して読者の共感を得ることである。

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人物のバックストーリーを作る

人物がどう考え行動するのか深くその心理を考える必要がある。心理に裏付けられない行動は薄っぺらく見える。人物の心理を考えることは「第二の次元」を考えることである。人の世界観は社会の価値観や政治、好み信条などに培われその人の態度や習慣、行動に現れる。 行動には心理的な裏付けが必要である。心理の理由になるのが、その人物のバックストーリーである。その人物が「なぜそうなったか」をバックストーリーで示す。ただし、バックストーリーをすべてストーリーに書くのはひかえたほうがよい。バックストーリーの描写は読者が人物の心理の背景を感じとれるくらいでよい。

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人物のコンフリクトを作る

コンフリクトとは主人公の動きに反する力を指す。優れたストーリーには、読者を沸かせるコンフリクトが二種類ある。主人公に対抗する外的要因とのコンフリクトと、主人公を引き留める心のコンフリクトだ。後者を「内面の悪魔」という。「内面の悪魔」とは、メンタルの在り方、欠点、思考パターンや心の価値観を揺るがせる思い込みなどである。人物がどうやってコンフリクトを乗り越え克服するか。それが、ストーリーの核になる。

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人物のアークを作る

「内面の悪魔」への対処方法が人物のアーク(変化)になる。アークとは人物が力と洞察を得ること、欠けていたものを得ること、つかえをとること、過去を捨てること、許すこと、大事な局面でよりよい選択をすることである。つまり人物のアークとは、その人物の学びである。

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人物のアークはサブプロット(メインのプロットに従属し、かつ関連する節)を充実させる。また、そこからサブテキスト(言外に含まれた意味)も生まれる。 多くのサブプロットは要約すると疑問文の形になる(二人は恋に落ちるか?彼女は仕事を得るか?生きるか死ぬか?)。人物に関するサブプロットを作るときは第二の次元、つまり「内面の悪魔」に注目しながら人物の背景を語ると充実する。「内面の悪魔」によって人物の選択肢を狭め行動に影響が出るようにすれば、やがてそのサブプロットはメインプロットと融合するだろう。 人物に関するサブテキストは、社会、心理、経済などの状況的なプレッシャーがあることを示すことが多い。人物は様々なプレッシャーに影響を受ける。その影響との葛藤が、人物に関するサブテキストを浮かび上がらせる。

人物を構成のパーツとして考える

「ストーリーの文脈と使命」に注目して人物を考えるとストーリーの構成の手掛かりになる。

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ストーリーのはじめの部分を「設定」と呼ぶ。主人公がどうなるか、どんな敵対者と衝突するかまだ分からない。人物が外に見せる顔(第一の次元)を設定のパートで見せる。 次に「反応」が起こる。主人公は、まったく新しい問題やニーズに直面するが問題解決には至らない。「反応」の部分は人物のアークの開始点でもある。主人公が表面を取り繕い続ける限り(第一の次元にとどまる限り)自由になれない。「反応」では、なぜそんな選択をするのかその心理(第二の次元)を掘り下げる。 「反応」の次は「攻撃」である。主人公は戦いを始める。「攻撃」では、第二の次元に潜む内面の悪魔の弊害がはっきりと表れる。主人公自身もここで内面の悪魔の存在に気づきはじめる。 「攻撃」のあと、「解決」にいたる。主人公は成長する(人物のアーク)。主人公は「内面の悪魔」を払拭し、危険を顧みず決断し行動する。

工学的ストーリー創作入門 売れる物語を書くために必要な6つの要素

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